【連載】プロが考える自分のお葬式 第2回「別れを経験した葬祭ディレクター」前編

こんにちは、香華殿の村井です。

日々葬儀に携わっている葬儀のプロが「自分自身」のためにお葬式を考えたら、そこにはお客様のお役に立つ情報が絶対にあるはず!と思いスタートした企画「葬儀のプロが考える自分のお葬式」。

今回は、香華殿を運営する株式会社メモリアルむらもとの葬儀部に所属する二唐渚さんが考えた「自分のお葬式」を、前後編に分けてご紹介します。

お話を聞いた人 二唐渚さん

〇2007年入社

〇株式会社メモリアルむらもと フューネラル事業部所属

〇昭和59年12月1日生まれ

二唐さんは3年前にご結婚され、昨年3月に第一子となるご長男をご出産されています。お客様のご希望を形にすることに情熱を持って取り組んでいる、仕事熱心な葬祭ディレクターです。ちなみにご主人は同じく葬儀部所属の山田元樹さん。インタビューの中で出てくる「山田さん」とは、このご主人のことです。

文中に ※ポイント とある箇所については、文末に葬儀お役立ちポイントとして解説を記載しましたので、そちらも是非ご覧ください!

          目  次

□「別れ」を経験したことがあるから家族葬を選びたい

□「出産」と「別れ」が与えた仕事への影響

□できれば誰のことも見送りたくない

□「お化粧」と「前髪」はちゃんとして!

「別れ」を経験したことがあるから家族葬を選びたい

村井 二唐さんはご自身のお葬式をどのような形にしたいとお考えですか?

二唐 歳をとってからと考えると自宅葬がいいなと思います。もし山田さんが先に亡くなったとしても自宅が良いですね。せっかく山田さんが建ててくれたおうちなので。最後は自宅で過ごしたいなと思います。自宅で家族葬がしたいです。

村井 家族葬ということですが、家族だけでやりたい理由はなんですか?

二唐 子ども達とか山田さんが気を使わずに過ごして欲しいので。

村井 家族葬でないと気を使うものでしょうか?

二唐 そう思います。私の父が2年前に60代で亡くなって一般葬をしたんですけど、本当にびっくりするくらいあっと言う間にお葬式が終わってしまいました。

葬儀までに中2日空けましたが、葬儀が始まったら本当にあっという間で。気づいたら全部終わっていたので。お父さんの兄弟とか会社の人にたくさん来ていただいて、とてもありがたいことがたくさんあったし、助けていただいたこともたくさんあったんですけど、家族だけでやるともっと悲しめたのかなと思って。

なので、私自身はもし60代で亡くなったとしても家族だけでゆっくりやりたいです。

村井 「悲しめた」という言葉が出てきましたが、お葬式で悲しむことって大事なんでしょうか?

二唐 大事だと思います。今グリーフケアとか葬儀後の心のケアというものがありますが、私の持論ではしっかり故人さんと向き合う時間や悲しむ時間があると、案外すっきりするというか

村井 なるほど。ちゃんと悲しむためには、多くの参列者さんに気遣いをするようなことが無い方が良いということでしょうか。

二唐 そうですね。参列者が多いと、特に男性は泣くに泣けないということがあるのではないでしょうか。会社の人が来ているからとか、人目が気になるとか、そういう理由で泣けなくなってしまう。しっかり悲しめるのは家族だけのお葬式だと思います。

村井 参列者が多い一般葬を選択する方も、故人様と向き合う時間を確保してしっかり悲しむことが大切なのかもしれませんね。

 「出産」と「別れ」が与えた仕事への影響

村井 ちなみに二唐さんは去年ご出産されていますが、その影響で何か変わったことはありますか?私は出産後、幸せが強烈すぎて、死に対する恐怖心が凄く強くなってしまいました。

二唐 ありますね。例えば、今まで小さなお子さんを遺して事故死された方のお葬式を担当した時などは、かわいそうだなという気持ちがありました。今はそのような時は、かわいそうだなという気持ちプラス、「息子を遺して私が死んでしまったらどうしよう。」ということを強く感じるようになりました。

村井 お仕事にも影響があるんですね。

二唐 仕事への影響ということを考えると、父を亡くした経験も大きいです。50代60代の方のお葬式に対する気持ちが変わりました。

村井 お父さんが亡くなった後、お仕事を続けるのがしんどいということはありませんでしたか?

二唐 しんどいというか、急に思い出すことはありましたね。お客様との打合せが終わって車を運転している時に突然ぽろぽろ涙が出たり。情緒不安定だったと思います。

村井 そうですよね。身近な方を亡くすと、気持ちが落ち着くまでかなり年数がかかると聞いたことがあります。お客様の気持ちに近くなりすぎるということがあったのかもしれませんね。

二唐 父を亡くした経験から、少しでも親身になってお伝えできることがあるかなとは思っています。例えばコロナウイルスの影響で、二人とか三人とかの葬儀をすることになったお客様が、「やっぱりこんなに人数が少ないとかわいそうだよね。」とおっしゃることがあったのですが、「そんなことないですよ。」「家族だけでゆっくり過ごせる時間があるのはむしろ羨ましいくらいです。」とお伝えしました。そういう言葉が、心の底から出てくるようになりましたね。

村井 お客様は救われますね。お葬式をたくさん担当している葬儀社のスタッフからそういう意見が聞けるというのは、本当に救いになると思います。

できれば誰のことも見送りたくない

村井 ご自身の自宅葬はどういう風にしたいと思いますか?例えば祭壇のお花はこんな風にしたいとかありますか?

二唐 どうでしょう。私特別花が好きとかでもないので。

村井 何か好きなものとかありますか?遺影以外にも写真を飾りたいとか、思い出コーナーとかは興味ないですか?

二唐 あまり興味ないですね。お寺さんも来なくていいし。ただ、みんなでご飯を食べて欲しいです。ご飯は準備すると大変だから注文して、みんなでゆっくりお食事会みたいな感じが良いかなと思います。

村井 私もみんなでご飯を食べてゆっくりして欲しいという希望があります。私の場合は、注文するお料理の他に、私が普段作っていた料理も少し作って食べて欲しいです。唐揚げとか、玉子焼きとか。

二唐 そうなんですね。私は料理があまり好きじゃなくて(笑)

村井 そういえば昔、山田さんが夜ご飯作ってましたよね。

二唐 今も山田さんが作ってます(笑)私は作ってないです。

村井 それは良い旦那さんを見つけましたね!お葬式の時のお料理は山田さんに作ってもらっても良いですね。

二唐 そうですね、それも良いですね。

村井 二唐さんは山田さんより年上でしたっけ?

二唐 そうです、6歳年上です。

村井 6歳差だったら、男女の平均寿命から考えると山田さんが先(に亡くなる)でしょうか。

二唐 でも私絶対先が良いです!見送りたくないです。

村井 ラブラブですね!

二唐 見送るの淋しいじゃないですか。

村井 うちは主人が5歳年上なので、順番でいくと必然的に主人が先に亡くなると思っているせいか、見送るのが淋しいと思ったことがありませんでした。それと、主人は身の回りのことが何もできない人なので、遺されると娘たちが困るという意識が強いです。

二唐 私は先に死にたいですね。

村井 そういう話って山田さんとしたことありますか?

二唐 ありますね。でもその時山田さんお酒を飲んでいて、

「私絶対先に死にたい!見送るの淋しいし。」

って言ったら、

「それずるくな~い?(高い声でモノマネ)」

って言ってました。酔っぱらって、ハイトーンで。

「俺だって嫌だよ~!」って(笑)

村井 仲良しですね、素敵!どちらも先に逝きたいと。見送られることを考えたら、どんな情景が浮かびますか?

二唐 お経も上げなくていいし、セレモニー的なこともしなくて良いと思います。できれば私は誰の事も見送りたくないので、3歳下の妹や2歳上のお兄ちゃんと、それぞれの子ども達がそろって見送って欲しいです。

「お化粧」と「前髪」はちゃんとして欲しい

村井 出棺の日は焼香とか献花もせずに?

二唐 そうですね。あ、湯灌はして欲しいです!※ポイント 病衣(びょうい)のままは嫌なので。

村井 病衣って?

二唐 病衣は病院のパジャマみたいなやつです。病衣でなければなんでも良いんですけど、病衣は嫌ですね。

村井 病衣は嫌だけど、それ以外なら何でも良いっていうところが面白いですね(笑)

もし万が一、山田さんが先に亡くなっていた場合おめかししたいとかありませんか?

私の上司のおばあさまが亡くなった時は、先に亡くなったおじいさまに会うために、お気に入りのお着物を着てシャネルの赤い口紅をして棺に入られたそうです。そういう思いはありませんか?

二唐 何が着たいというのは無いけどお化粧はして欲しい。絶対にして欲しいです。髪もちゃんとして欲しいし。

村井 髪もちゃんとと言うと、どういう感じですか?結う?

二唐 結わなくていいけどきれいにして欲しいです。

長く闘病して亡くなると前髪が横に流れてしまうので、前髪をちゃんとして欲しいです。元気な時のヘアスタイルに戻して欲しい。

村井 前髪が横に流れる・・・ワンレン?

二唐 古い(笑)

村井 世代が昭和なんで(笑)

二唐 私も昭和ですけど(笑)とにかく前髪をちゃんと作って欲しいです。

村井 もし山田さんがご存命でも前髪はちゃんと作った方が良いですね。山田さんに言っておかないと!闘病が長いと前髪がなくなっているというのは知りませんでした。お化粧って別メニューでしたっけ?

二唐 湯灌をすればついてきます。

村井 この他に絶対に湯灌をして欲しい理由はありますか?

二唐 湯灌は処置的な意味も含んでいるので、きちんと処置をして、においとかも出ないようにして欲しいし

村井 においを防ぐために湯灌って効果があるんですね。

二唐 ありますあります。湯灌は体を清めるだけじゃなくて、基本は処置プラスα着替えなので。湯灌をしないと含み綿もないので。

村井 含み綿をすると、ふっくらするんですか?

二唐 ふっくらするし、あがってくるもの(体内から出るガス)も遮断されます。

なので湯灌は綺麗にするというよりも、そういう処置的な意味合いが大きいです。自分も絶対湯灌はして欲しい。

後編に続きます。

葬儀お役立ちポイント

湯灌とは、湯舟やシャワーを使ってご遺体を洗い清める儀式です。着付けや化粧、ヘアセットも行います。

     後編目次

□日常のようなお葬式

□手紙

□やりたいことが出来る「お葬式」

別れを経験した葬祭ディレクターが考える「自分自身の葬儀」後編はこちら

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