法話の会【浄光寺 青山住職】③「日本人の幸せ」と「ブータン人の幸せ」

法話の会【浄光寺 青山住職】②本当に貧しい人・本当に不幸な人とはより続きます。

世界一幸せな国ブータン

日本からはるか西にブータンという国があります。インドと中国に挟まれた小さな国ですが、その国は世界で唯一チベット仏教を国の宗教「国教」としている国です。

今から10年ほど前、ブータンから国王夫妻が来日されました。国賓として来られていたので日々の動向がニュースにもなっていました。例えば東日本大震災の被災地をお見舞いに回られたり、国会で演説をされたり、天皇陛下と晩餐会をなさったりという様子がニュースでも流れていたんです。そして日中の情報番組ではブータンがどういう国かということも流れていました。ブータンは経済的には豊かな国ではないけれども、世界で最も幸せな国だというふうに紹介されていたんです。国の大きさはだいたい日本の九州と同じくらいだと言われています。私たちが住むこの北海道は九州と四国を合わせたよりも広いですから、北海道よりも小さな国です。人口は70万人位だと言われています。北海道は札幌だけでも200万人ですから人口も北海道よりはるかに少ないんですけれど、その国が世界で最も幸せな国だと言われていたんです。なぜブータンが世界で最も幸せな国なのでしょうか。

ブータンの人々の心に根付く「仏教の教え」

私には、定期的にブータンに行く友人がいます。その友人は、首都のティンプーというところで人々に「あなたは幸せですか?」と聞いて回るそうです。ブータン政府の調査結果では95%の人が幸せだと回答しているんですけど、友人が聞いて回った結果も幸せだという人が多いそうです。その幸せだと答えてくれた人に友人はもう一つ「なぜ幸せだと思うんですか?」と質問をするそうです。そうしたら、どんな答えが返ってくるか。こんな答えがたくさん返ってきたそうです。「私が幸せなのは、私の周りの人達が幸せだからです」と、多くのブータン人からそういう回答を得たそうです。

日本人の場合はどうでしょうか。皆さんの中でも幸せな方が多いと思いますが、どうして幸せかと問われたらなんと答えるか。色々な答えがあると思うんですけど、私たちの場合多いのが自分と他者とを比較して、周りの友達とか同僚とかと比較して自分が他者よりも優位に立っていれば、例えば着ている服とか乗っている車とか、年収とか住んでいる家とか、そういったものを自己と他者とを比較して、自分の価値基準の中であの人より上だなと思っていれば、「あ、私あの人より幸せだ」と思うケースが多いと思うんです。でもブータンの人たちはどうかというと、自分と他者とを比較するどころか周りの人たちの幸せを願い、「周りの人たちが幸せだから自分は幸せです」と思う。それがブータンの人たちです。その考え方、思想背景には何があるかというとおそらく国の宗教、仏教の教えが国民一人ひとりの中に根付いているんだと思います。東日本大震災が起こった2011年3月11日以降、ブータンの方々は私たち日本人のために、家の近くのお寺に行って祈りを捧げてくれていたというニュースを私も後に知ることになったんですけど、それだけ生活の中に仏教の教えが根付いているわけです。

周りの人たちの幸せを自分の幸せかのように思う。そういう仏様のお心に叶った生活をなさっているのがブータンの人たちです。私たちは経済的にはブータンの人たちよりもはるかに恵まれていますが、少しでも仏教の教えをよりどころにして人生を歩むこと、それが今の時代にとっては大切な生き方かなと思います。今はよく言われるのが、「今だけ、金だけ、自分だけ」という生活がはびこっていますけれども、そうじゃなくて少しでも他者のことに目を配り、お金だけじゃなくてもっと広い視野で自分以外のことも、過去の事も未来の事もそういった色々な人たちに思いをはせながら生活をしていくということが、仏教徒にとっての生き方であると思っています。

今はなかなか外出し辛い世の中ですけれど、少しでも仏教の教えが世の中に広がっていけば、より多くの幸せが築けるだろうと思いますので、ご縁のある人には近くのお寺にお参りに行っていただいて、仏様の教えを聞く、そういう日暮らしを歩んで頂きたいと思います。

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